そのひぐらし

バンドそのひぐらしの音楽活動をお届けします

岡嵜少年記 1993夏編

1993年夏、私は中学1年生だった。

その頃の私は友人、T人、K下、F原と共に藤枝市に流れる一級河川、瀬戸川の川原で

カンシャク玉や爆竹などをドンパチやって喜んでいた。

中でもケムリ玉のケムリをビニール袋一杯に詰めるのは私の人生の楽しみの一つであった。

その日もいつものように、私達の花火会場から最寄のT人の家に皆で集まった。

T人の家には何かと難癖を付け、鈍器を振り回し襲ってくる獰猛かつ好戦的な妹がいることで有名だった。

T人の家に集まった私達は、花火を仕入れに近所の大型玩具店へと向かうべく、

チャリに跨りさあ出発という段になった時、T人の妹が庭の方から雄叫びと共に現われた。

両手で持ってジョキジョキ草木を刈る枝切りバサミを持っている。

やばい! 逃げろー!! と私達はチャリで走り出したが、K下が一人チャリに乗り遅れ走って逃げてきている。

チャリでなければ玩具店に行くのが大変だ。

なんとかK下のチャリを取り戻さねばならないが、

K下のチャリの所にはT人の妹が陣取り、まるでチャリが人質の様になっている。

おい妹!やめろ!と兄が怒るが妹は聞かず、3段変速ギアを勝手に変えたりなどチャリにちょっかいを出し始めた。

ジリジリと距離を詰める私達だったが、突然K下がツカツカと真っ直ぐに妹の方に歩き始めた。

妹はK下の発する怒気と意外な行動に戸惑っているようだ。

「いい加減にしろよ」

K下は低く言うと同時に垂直に飛び上がり、上段回し蹴りを放った。

妹はウッと身構えたが、K下の足は妹の頭上の空を切った。

テレビと漫画で身につけたフェミニズムを持つK下は元から妹の顔面など狙っておらず、威嚇のための回し蹴りだったのだ。

おおッかっこいい! と思ったが、「あっ」とK下は着地に失敗し、どてっと尻餅をついた。最高にかっこ悪い。

次の瞬間、妹の持つ枝切りバサミは凶悪に刃を広げ、スチャッとK下の首を挟むように構えられた。

形勢は一気に逆転。 K下の命はもはや妹の手の中だ。

確かT人んちは東京から引っ越してきた家族! 家も庭もお母さんも都会的な洗練された雰囲気を醸し出している!

「ぼくんちお父さん、パイロットなんだ」と実際それは知らんが、そんな感じの家である!

枝切りバサミも私の家の納屋にひっぽ投げてあるような木の柄の錆びたようなヤツではない!

柄がオシャレなアルミ製の新品だ! よく切れそうだ!

話しを戻そう。 T人は「やめるんだ妹ー!」と叫ぶが、やはり妹は動かない。

K下もまた動かず両者の睨み合いが続く。

息が詰まりそうな沈黙の後、K下が口を開いた。

「・・・・やれよ。」

この局面でやれよって何だよ!? と私は声を上げゲラゲラと笑ってしまった。

貴様は自分で格好つけて自分でスッ転んで首をはねてくれと言っているのか?

T人、F原に白い目で見られようとも、あまりの滑稽さに笑いが収まらなかった。

残念ながらこの日の記憶はここまでしかないが、K下は無事に中学を卒業し、妹も今頃はどこぞで立派な奥さんになっているだろう。

死人は出なかった模様だ。

1993年、夏の出来事だった。


Fin














  1. 2017/09/19(火) 20:53:46|
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  4. | コメント:2
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コメント

久々です。
間が空いてゴメンなさい。
さすがの切れ味ですね、夜中に声出して笑ってしまいました。
ライブ、また行かせてもらいます(^_^)v
maskも細々と復活しました。
  1. 2017/09/22(金) 01:25:24 |
  2. URL |
  3. maskマーチン #bRGm034g
  4. [ 編集 ]

マーチン殿

mask復活、おめでとうございます。
笑ってくれればK下も本望でしょう。
ありがとうございます。
  1. 2017/09/23(土) 01:22:22 |
  2. URL |
  3. そのひぐらし 岡嵜 #-
  4. [ 編集 ]

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